はじめに
自分のための記録と言いつつ、ブログを書く以上、読者の存在を意識しないわけにはいきませんでした。言葉を形に残し、広めたいと望む自分の野心に、戸惑いを感じることさえありました。
それでも、この二年間余り、たとえお一人でも「誰かが見ている」という緊張感の中で書き続けたことは、自分の中の断片を整理し、新しい発見をくれるかけがえのない時間となりました。おかげさまで、自分の中では覚書以上のものになったと思っています。
とりわけ、「わたし」を突き詰めた末に行き着いた「無我」。
現代社会を後ろ歩きに見つめる中で立ち現れた「無常観」。
「わたし」を掘り下げるほど鮮明になっていった「縁起」。
そして、これら3つの柱を貫く現存在―人間が世界に投げ出されてここに在ること―観。
これらはわたしの確かな財産であり、これから老いと病気を携えて死に至るコンパスでもあり、いつかこの生を終えて旅立つ際の、永遠に消えない「彼岸への土産物」です。
覚書の2年間
この他にも、この2年間というもの様々なことを自覚するに至りました。
ある日、瞑想中に、こころの中にあった不思議な塊のようなものが、ふっと消え去る経験をしました。「これは、ひょっとして煩悩だったのではないか」と思い始めたのは、しばらく経ってからのことです。
それまでのわたしにとって、「煩悩の滅除」という言葉は、目標として掲げていたものでもなく、どこか観念的で、少し妄想めいた響きを持つ言葉に過ぎませんでした。
そもそも、生きている状態で煩悩が消えるなどとは思ってもいませんでしたし、瞑想の目的として考えたこともありませんでした。そのため、あのとき消えた「こころの塊」が何だったのか、当初はただ謎のままだったのです。
しかしその後、日常生活の中で、かつてはわずかながら「苦しみ」を伴っていた興味の対象が、いつの間にかすっかり消えていることに気づき始めました。
「ひょっとして、これが煩悩というものであり、その消失こそがわたしの人生の目的だったのではないだろうか。」
そう得心するようになったのは、さらにしばらく時間が経ってからのことでした。
しかし、情報に晒された生活を営んでいると煩悩という怪物は何度も湧き上がってくることも判明し、自分なりに御してはきました。一方で、煩悩とセットで語られている執着の欠片が、今なおこころの隅に潜んでいることも分かりました。
この執着は、中間コミュニティを整理している内に浮き上がってきたものです。現在ある家族に対するというよりは、過去の憧憬に近い性質のものだと考えています。
「悟り」の本質
独自に悟りを目指す人々については、大乗仏教の文脈では、しばしば「小乗」といった呼び方とともに、「縁覚(えんがく)」や「辟支仏(びゃくしぶつ)」といった語で語られてきました。そこには、わずかながら批評的な響きが含まれている場合もあります。
一般に「悟り」と呼ばれる体験は、本来どこまでも個的な体験です。突然であることもあって、安易に他者と共有できるものではありません。それは決して「説くことを拒んでいる」のではなく、いかなる言葉を尽くしても「説ききることができない」し、そもそも「説きようがない」領域なのです。
独り、自ら目覚める――。「独覚」という言葉の響きに、その峻厳な真実が凝縮されているように思えます。そして、その歩みは、独りでしかなしえない遠い道のりであることも自明となりました。
仏説では、お釈迦さまの思想は、川を渡るための筏(いかが)にたとえられます。渡り終えたなら筏は置いていく。悟りとは、何かを得ることではなく、握っていたものを手放していくことなのです。
そのことと関係しているのかどうかは分かりませんが、近ごろは仏教という枠組みや、お釈迦さまの思想そのものにさえ、以前のような関心を抱かなくなってきました。
目に見えない世界における視座が変わった今では、救済のために他者に説き及ぶという行為は、お釈迦さまを含めた七仏のみが担い宿された、あまりに尊い役目であったと痛感しています。
その境界線を忘れ、宗教という枠の中で「教え」としてシステム化しようとしたところに、現代の仏教が陥っている混迷の根源があるように思えてなりません。
おわりに
この未だ残る執着とどう向き合って生きていくか。サンガ(修行共同体)のないこの現代で、それはわたしに与えられた生涯の課題です。
さて、セールの勢いで契約してしまったサーバーの期間が、まだ一年ほど残っています。この契約が満了するまでは、さらにのんびりとしたペースで更新を続ける予定です。
これからのわたしは変わらずに、家事をしたり、家族の料理を作ったり、残された日々を自分と向き合いながら生きていこうと思っています。
これまで読み続けてくださった皆様に、こころからの感謝を。皆様の生活が平穏でありますよう祈念しつつ、一旦の区切りとさせていただきます。
ありがとうございました。



