わたしは1962年生まれです。
共通一次が始まった世代で、「こんな〇の塗りつぶしで進路を決められてたまるか!」と反発し、マークシートにサイン波のような模様を書いてみるなど、小さな反抗を繰り返していたものです。
村社会と言うと良くないイメージが先行しがちですが、田舎で育った昭和世代のわたしにとってそれは、地域の中間的コミュニティであり、いとこたちと大家族のように騒いで過ごした、かけがえのない時間でもありました。
わたしが、これまで印象的だったことは、バブルが崩壊し、右肩上がりの時代が急速に落ち込んでいくのと歩調を合わせるように、人と人とのつながりまでもが音を立てて崩れていく様子です。
他の世代と大きく違うのは、目の前から “在ったものが次々と消えていく” その喪失の感覚を、私たち昭和世代が身をもって味わってきたという点だと思います。
それから、平成から令和へと「個の時代」をまっしぐらに突き進んでいきます。そんな世相と共に老境を迎えていく昭和世代に、少しでもヒントになる素材があればと今回の出版に至りました。
今回出版した電子書籍『夕暮れ時の縁側』は、平成以降に生まれた方にも読んでいただける内容ですが、とりわけ、わたしと同じ昭和世代の方々に向けて書いたものです。古い仏典にある「軽安」という言葉をひとつの鍵にしています。
前著『ソマミチ』と異なり、難解な哲学や仏典用語はできる限り取り除き、「瞑想」のような実践的アプローチも提示していません。
気負わず、気軽に手に取っていただければ嬉しく思います。





