ストレスとの向き合い方

はじめに

わたしたちは日々、当たり前のようにストレスにさらされています。
「ストレス」という言葉の歴史は半世紀を超え、研究も進んでいます。

ストレスの原因となるものは「ストレッサー」と呼ばれ、人間関係、職場、家庭、健康、環境など、実に多様です。人の数だけストレッサーがあり、逃れられない現代社会に生きているといっても過言ではありません。

お釈迦さまは、「人生は苦である」と説かれました。
苦とは、突き詰めれば「思い通りにならないこと」です。
思い通りにならない現実が続くと、人はストレスを感じます。
そのストレスが積み重なれば、こころやカラダを蝕み、やがて人生そのものに影響を及ぼします。

今回は、この“思い通りにならない世界”の中で避けて通れない、
人生の大きな壁である「ストレス」について考えてみたいと思います。

ストレスの種類と役割

ストレスは、すべてが悪いわけではありません。
災害やハラスメントのように突然襲うものもあれば、
スポーツの試合や発表会のように、緊張が集中力を高める場面もあります。

研究によると、まったくストレスのない状態よりも、適度なストレスがある方が能力を発揮できるそうです。
張りのない生活は、向上心を奪い、退屈な毎日をもたらしてしまうかもしれません。

つまり、ストレスとは“悪”ではなく、生きるための刺激でもあるのです。
問題は、行き過ぎたストレスをどう見極め、どう扱うかにあります。

行き過ぎたストレスの弊害

ストレスは、やがてこころの深い部分にまで下りてきます。
こころまで侵入すると、怒りや嫉妬、自己否定といった「罪」を生み、カラダにも不調を及ぼします。

わたしが僧侶であった頃、龍神様が信徒さんに事あるごとにおっしゃっていました。
病は、ある日突然やってくるようでいて、実は日々の積み重ねの果てに現れるもの
重なるストレスが病気の最大の要因のひとつであるのもうなづける言葉です。

一方で、人には、意識的にも無意識的にも自分を守る力があります。
しかしその防衛反応が、攻撃性となって自分や他人に向かうことがあります。

画像はイメージです

スポーツや趣味など、健全な形で発散できれば良いのですが、怒りや不満として爆発してしまうと、自分を守るはずの反応が“破壊”へと転じてしまいます。

このとき、ストレスはすでに「こころの問題」へと変貌しています。
こころに生じた罪は、自分の幸せを遠ざけるばかりか、周囲にも影響を及ぼします。

こころの中の“棘”に気づく

目に見える棘や歯に挟まった食べ物は、誰でもすぐに取り除こうとします。
ところが、こころに刺さった棘――もやもやした怒りや悲しみ――には、なぜか気づかないふりをしてしまう人が多いのです。

この棘を放置すると、こころと結びついて固まり、やがて慢性的なストレスへと変わります。だからこそ、早い段階で“いら立ち”や“不安”を自覚し、深く根を張る前に対処することが大切です。

ストレスを軽く考えてはいけません。
放っておけば、知らぬ間に生きる力を奪ってしまうからです。このことが、いつの間にか積み重なって、病気の要因となっていくのです。

ストレスを“いなす”智慧

ストレスがこころに下りる前に、それを“いなす”智慧(ちえ)を身につけることが、生きる術です。

気分転換の方法をいくつか持つのも良いでしょう。
散歩、音楽、読書、誰かとの会話。
行動に移す一歩手前で「いったん思い変える」訓練が役立ちます。

「ストレスを感じたその瞬間に、深呼吸を一つする」
それだけでも、ストレスはこころの奥へ下りずに済むかもしれません。

広い視野で見る

ストレスに押しつぶされそうになったら、視野を広げてみてください。
今の状況だけでなく、これまでの人生、家族、未来、そして目に見えない世界のつながりまでを含めて、大きな視野で“自分”を見つめ直すのです。

画像はイメージです

近視眼的になると、人は容易に不幸に陥ります。
一歩引いて全体を眺めるだけで、重くのしかかっていたストレスの輪郭が少し変わって見えるものです。

おわりに

ストレスとは、現れては消え、消えてはまた現れる“妖怪”のような存在です。
完全に消し去ることはできません。
だからこそ、うまく付き合っていくしかないのです。

画像はイメージです

不条理だらけの社会、思い通りにならない体。
それでも生きていくということは、ストレスとともに歩むということでもあります。

生きるとは、すなわち修行です。
ストレスの真っただ中にいるとき、「これも修行だ」と受け止める余裕など、ないのが当然でしょう。
それでも、そんな状況から一歩だけでも踏み出そうとする強さ――それこそが、思いを変える最初の一歩なのです。

ストレスを敵にせず、師として受け入れたとき、その苦しみは、やがて智慧へと変わっていくでしょう。ストレスと共にある人生の中にこそ、お釈迦さまの「こころの発現」が育まれていくのかもしれません。

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